メリル・ストリープのナレーションが静かに流れ、アフリカの大平原を見渡す丘の墓の上で、ライオンたちがゆったりと集う-。シドニー・ポラック
=写真、AP=の訃報(5月26日)を聞いて、彼が監督した「愛と哀しみの果て」のラストシーンが浮かんで来た。
1985年度のアカデミー賞7部門で受賞し、ポラック自身も最優秀監督賞とプロデュース賞を獲得したこの名作。以前、主演のストリープがテレビのトークショーで語っていた。
「絶対にこの役が欲しくて、ポラック監督に会いに行った時、胸の開いたドレスを着てセクシーに見せようとしたの」。当時すでに2つのアカデミー賞を手中にしていた大スターのストリープですら、ポラック作品出演のために必死になるほど、俳優たちの信頼は厚かった。
ポラックは、役者の長所を引き出して輝かせることにも才能を発揮した。ジェーン・フォンダは、69年に彼が監督した「ひとりぼっちの青春」でオスカーにノミネートされ演技派に転身。ジェシカ・ラングは「トッツィー」で助演女優賞を獲得。特にロバート・レッドフォードは、50年近い友情を温め「追憶」「愛と哀しみの果て」など7本のポラック作品に出演した。
ポラック自身役者としても愛された。「トッツィー」「アイズ・ワイド・シャット」など18本の映画とテレビドラマに出演。監督、制作、俳優と多才に活躍してきた。
訃報を伝えたFOXテレビの「Good Day LA」ではトム・クルーズのエピソードが紹介された。クルーズがまだ新進俳優だった頃、ポラックに演技について質問すると、初対面で忙しかったのに映画から家族、ワインの選び方まで、6時間も割いて答えてくれたという。「ポラックを悪くいう人はいなかった」。人柄がしのばれる。
昨年「フィクサー」で共演したジョージ・クルーニーは、「彼は世界を少しだけ住みよい場所にし、映画を少し良いものにしてくれた。誰もがポラックをひどく惜しむだろう」と73年の生涯を惜しんだ。
「愛と哀しみの果て」のような壮大で繊細な作品は、今のハリウッドではもう作られないのだろう。(板垣眞理子)
ZAKZAK 2008/06/05
出しゃばらない人ってかっこいいよね
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